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 ダイデ橋  Pont Daydé 

ダイデ橋(Pont Daydé)は、かつてフランス最大のルノー工場のあったセーヌ川の中洲のセガン島(Île Seguin、11.5ha)と、右岸を結ぶために1928年に作られた工場専用橋。中央のスパンは74.4m。工場は1992年に閉鎖され、2017年にラ・セーヌ・ミュージカル(La Seine Musicale)というライブ会場という斬新な施設としてオープンした。私が行ったのは、工場が閉鎖されてから10年後だったが、工場は閉鎖されたまま放置され、侘しい感じが漂う橋だった。1枚目にその時の写真を掲載する。私は、ただ珍しい形式の橋だったので、撮影しただけ。しかし、この橋についての解説を書き始めると、このタイプの橋が非常に稀で、全く同じ形のものは、東京の葛西橋(中央のスパン142.0m、1963年)しかないと分かった。そこで、丁寧に解説することにした。まず必要なのは葛西橋の写真なので、WEB上で探し、似たような方向から撮られた葛西橋の写真が見つかったので2枚目に掲載する。そして、話題を拡げるため、3枚目に、私が撮った清洲橋(中央スパン91.4m、1928年はダイデ橋と偶然同じ年)を、対比用に示す。葛西橋と清洲橋はよく似ているが、形式が全く違う。清洲橋は、ドイツのヒンデンブルク橋(Hindenburgbrücke)を真似て作ったものなので、4枚目に戦争で破壊される前の写真を載せる(これだけ、撮影の向きが違う)。ついでに、5枚目にスペインのテンプル水道橋(Acueducto de Tempul、中央のスパ59.4m、1925年)も、対比のために提示する。
 
 
 
 
 

次に、下の簡単な図でそれぞれの原理の違いを説明する。
 
ダイデ橋や葛西橋は、「ゲルバー式吊補剛桁橋」という名称の構造者。「ゲルバー」というのは、橋の中央の部分に、別の桁(緑色)を載せて、橋を長くする時に使う手法。従って、ダイデ橋や葛西橋では、両側の主塔(灰黒色)から、斜めに下ろした鋼材(茶色)で、片持ち状態の桁(青色)を吊っている、そして、両側の片持ち状態の桁の先端に別の桁(緑色)を置いている。なぜこんな複雑な構造にしたかは分からないが、世界でも例が少ないのはそのため。下が桁ではなく、トラスになっているものを含めても、世界の橋のデータベースには、7橋しかリストアップされていない。そして何度も述べるが、ダイデ橋や葛西橋と同じ形のものは、この2橋だけ。次に、図の2つ目が「自碇式チェーン吊橋」の2橋。19世紀の前半にイギリスで普及したチェーン吊橋は、同じ頃にフランスで普及し始めたケーブル吊橋に負けて、19世紀後半には姿を消すが、20世紀に入り、「自碇式チェーン吊橋」という新しい形式で復活する(この2橋だけ)。普通のアンカー式でも、この自碇式(主チェーンを橋桁の端に付ける)でも、ケーブルでなくチェーン吊橋なので、主塔(灰黒色)と主塔の間を太い吊鎖(茶色)がピン(黄色)で接続されてずらりと並び、橋桁(青色)を支えている。最後に紹介したテンプル水道橋は、意図して生まれたものではなく、基礎工事を軽減するために急きょ考え出された代替案。主塔(灰黒色)から1本伸びた斜材(茶色)が水路(青色)を吊っている。作ったのは、偉大な建築家エドゥアルド・トロハ(Eduardo Torroja)がスペインの南端で作ったものなので、橋を専門とする土木技術者にはほとんど知られていないが、世界初の近代的な斜張橋(普通は、1955年のストロムスンド橋(Strömsundsbron)が世界初とされている)。

最後に、現在のダイデ橋がWEBにあったので掲載する(下の写真)。歩行者用に、橋の両側に張り出したオーク材の広いデッキが、橋の雰囲気を大きく変えている。